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ごはんを食べよう国民運動推進協議会主催

「米粉と日本酒の消費拡大をどう図るか」

とき 平成24年11月9日
ところ 航空会館5階501・502会議室(東京都港区新橋)
講演U「日本酒の魅力と米の消費拡大に向けた取り組みについて」

上松 昇 氏(株)福光屋研究開発部主任研究員、生産二部課長

上松 昇
(株)福光屋研究開発部主任研究員、生産二部課長

滋賀県大津市出身。石川県金沢市在住。金沢大学工学部物質科学工学科卒業。平成7年株式会社福光屋入社。醸造部、営業開発部を経て平成9年に現在の部署に所属。「日本酒の伝統的醗酵技術の応用によるスキンケア化粧品」(第3回ものづくり日本大賞優秀賞受賞)他、酒類、食品などの新商品開発、原料米の担当に携わる。

 皆さんこんにちは。ただ今ご紹介いただきました福光屋の上松と申します。本日は地方の1酒蔵の1事例として、取り組みをご紹介させていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 われわれ酒蔵は1625年の創業でございます。今年で387年と大変長い歴史を持つ酒蔵であります。今現在で13代目です。14代目も今営業のトップとして頑張ってるところでございます。場所は金沢市のど真ん中、有名な兼六園から歩いて10分ぐらいのところ、町中なんですけども、もともとは酒蔵というと片田舎というか山間が多いところなんですが、387年前は周りは何もなくてというところだったんですね。ただわれわれの蔵の周りが勝手に栄えてきて、ちょっと都市部になったというかそういうところでございます。また兼六園に毎日のように観光客の方がいらっしゃいまして、当然うちの方にも見学される方、大体月で1,000人以上の方、見学応対としてお迎えしております。皆さんうちのファンになっていただけるように、われわれも頑張っているところでございます。また、金沢はお酒もおいしいんですけども食もおいしいところでございまして、つい2、3日前にカニが解禁になりましたし、これから脂の乗った寒ブリとか、あと加賀の料理ですね。あと温泉もたくさんあるところですので、是非皆さんお越しいただければと思います。
 最初のあの左側、これ蔵の入り口なんですけども、ちょっと杉玉、丸いボールのようなものが飾ってありますが、これは酒屋のシンボルです。奈良県の三輪神社、これ日本で最古の神社といわれておるところなんですけども、そこの御神木が杉なんですね。この杉の葉っぱを丸く加工して飾っておるということで、三輪は三輪そうめんの本場でもあるとこですね。
 われわれ福光屋は2001年に純米蔵宣言というのをいたしました。そもそも純米とは何かということなんですけども、原料となるのは米と水だけ、そのほかの原料は一切使わないと。これが純米酒です。ちなみにお米は産地と契約栽培をしている酒造好適米、また水はわれわれ井戸水で150メートル下から水をくみ上げております。金沢のわれわれの水はどちらかというとやや硬水の水です。カルシウムとかマグネシウムとかがたくさん入っていればいるほど硬水なんですけども、お酒にすると辛口のお酒になりやすい傾向があります。逆に軟水は甘口のお酒になりやすいという傾向があります。われわれこの使ってる水、100年水と表現しておるんですけども、これ最寄りに金沢大学さんがありまして、そこの理学部さんの方でお水の年齢を分析していただきました。お水の中に含まれる放射性同位元素、フリチウムという物質がありまして、それの還元率でお水の年齢が分かると。そういうことで100年前のお水に相当するというお墨付きをいただいて、われわれが「恵みの百年水」というふうに表現をさせていただいております。
 また蔵の前では、朝から晩まで水をちょろちょろ流してるわけで、ご近所の方がその水を汲みにくるわけですね。容器持参で無料提供さしていただいてます。近くのおそば屋さんとか下校中の小学生とか、ペットボトルを持ったですね。毎日のようにくんで行きますし、あとトラックで乗り付けて、ポリタンク10個とか20個とか持ってきて、そこでくんでいくと。天然のただのナチュラルミネラルウォーターですから、たくさん本当に無償で提供しているんですが、ただわれわれその水も商品として売ってるものにつきましては殺菌をしてるので問題ないんですけども、あくまでもそれは自己責任で皆さんくんでいただいておるというので、皆さん一応、まあ小学生はあれですけども、一筆書いていただいております。その紙に書いていただければ、容器持参で無限にどんだけでも持っていっていいですというような対応をさせていただいております。この水はわれわれの蔵の中、水道水っていうのはありません。これ一切なくて、蔵の中の当然酒造りのお水、あとご飯、お手洗い、お風呂、全てナチュラルミネラルウォーター、大変ぜいたくな生活をさしていただいております。
 酒造好適米とは何かと。訳して酒米ですが、一般米に比べて粒が大きいです。コシヒカリとかササニシキとか、そういったものに比べて粒が大きいです。たんぱく質とか脂肪が少ない。逆にいうとうまみ成分が少ないので、酒米は食べてもそんなにおいしくはないんです。ただお米の中に含まれるうまみ成分というのは、実は酒造りにとっては多いとあまりよろしくないんですね。ちょっと重たいお酒になっちゃいます。ですから酒米は比較的淡泊です。あと一般米っていうのは非常に透き通ったきれいなお米ですけども、酒米は真ん中に心白という白い部分があります。これが実は酒造りにとって重要な要素であります。あと水ですが飲用に適する、これは当たり前ですね。あと酒は微生物が作りますので、栄養となる成分を適量に含むと。あと着色の原因となる鉄分とかマンガンを含んでいないもの、これが酒造りに適したお水です。ちなみにこの酒米ですけども、皆さん大変おいしいお米食べられていると思うんですが、コシヒカリとかに比べて酒米の方が値段は高いです。ですから非常にぜいたくなお米といえばお米ですね。
 われわれが契約栽培している産地を紹介したいと思います。まず一つ目は皆さんご存じですかね、山田錦という有名な酒米があります。これは兵庫県の多可町中区坂本というところで、兵庫県の本当にど真ん中ですね。昭和35年から契約栽培をして今年で52年、半世紀以上ですね、お付き合いしております。平成20年には一部無農薬栽培の山田錦を採りました。同じくここ兵庫県の豊岡市という日本海側なんですけども、ここではフクノハナという品種を栽培しております。今年で25年ですね。四半世紀。ここでも平成20年に有機栽培のフクノハナを一部採種しております。この場所は非常に人間が住むにはあんまり適してないというか過酷なところで、夏は日本でも記録的な暑さ、この辺ですと群馬県の何とか市とか、よくニュースで言ってるんですけども、同じくこの兵庫県の豊岡市ってところは必ずニュースで夏に38度でたとか、冬は非常に雪も多いですし、何年か前には大洪水で町が水没しちゃったというようなところでもあります。また平成17年には秋篠宮さまがいらっしゃいまして、コウノトリ放鳥されたという町でもあります。3つ目、これは金紋錦という品種で、長野県の木島平村というところで普通に栽培してる米です。これも25周年ですね。同じく昭和21年に一部有機JASのお米を取得しました。ここは長野と新潟の県境ぐらいで大変雪の多いところ、メーター級の雪が降るところでして、コシヒカリも有名なんですけども、あとキノコとかアスパラ、ズッキーニ、大変農産物が多く採れる場所でもあります。またここは非常に地震の多いところで、中越地震とか長野の地震では、震度5ぐらいの地震が頻繁に多発しているところでして、先日も震度5の地震があったとき電話かけたら「震度5いつもだからそんな大したことないよ」と。「ちょっともの落ちたぐらいだから心配しないでね」といったような感じで、われわれの感覚とはまた全然違うところでもあります。私個人的にこのお米の方も担当してますので、年間にこの3地区合わせて20回ぐらいは産地へ赴いております。延べ日数にすると、もう1カ月以上産地に行っていることになりまして、こういう人がたくさんいる大都会東京とかというのは、年に1回あるかないかぐらいで、来ること自体に大変ちょっと緊張というか抵抗があります。とにかく何回も行っているのは、とにかくお互いに作り手の顔が見えるお付き合いをしたいということから、頻繁に行っているという次第です。これは山田錦で、福光屋契約栽培の看板です。50年経ってやっと看板が立ったというところなんですけども、こういうものもあります。これは一応圃場試験というのを行っておりまして、実際私も田んぼの中に入って、これは田植えから1カ月ぐらい経ったぐらいですね。茎の数とか丈とか、病害虫大丈夫かなとかそんなようなチェックをしております。メンバーはJAの職員の方とか普及センターの方とかと一緒になってやっております。生産者とはこのように土づくりから一緒にやっているといった状況ですね。
 これは同じく山田錦の刈り取り前の状態です。このときには一株どれぐらい粒がついてるかとかも含めて調べます。それからこのときにちょうど一坪分くらい、坪刈りというのを行いまして、それをちょっと脱穀して精米して、田んぼごとに試験的にビーカーサイズでお酒を造って、それを品質、田んぼごとにチェックとかそういったこともしてまして、それ一つはお酒のイベントごととして兵庫県の方でやっております。そうやってみんな高品質なお米、例えばお酒造り頑張っていきましょうねということを、毎年産地と一緒にやっております。これは兵庫県の山田錦の産地です。このように山間部に囲まれて、いかにもいい米が取れそうだなという感じしませんかね。本当に逆に言うとほか何もないところでもありますね。コンビニエンスストアもあんまりないところです。
 これは長野県の木島平村の風景を山の上から撮ったところです。先ほど申し上げたように、ここはコシヒカリが非常においしい幻の米という商品で確か売っているところでして、近くに有名な魚沼地区とかもあるところでして、私もたまにここのコシヒカリをいただいたりするんですけども、甘みというか粘りというか日本人で良かったなと思うぐらい、非常においしいコシヒカリを作っている産地です。こういったところに一緒に金紋錦という酒米も作っていただいております。
 これは兵庫県の豊岡市でフクノハナを作ってるところです。これ飛んでるのはコウノトリです。私たまたま田んぼに行ったときにコウノトリが飛んでいたので、頑張ってデジカメで、なかなかナイスショットだと思うんですけども、いい写真が撮れたと思います。このコウノトリがいるということは、田んぼの中にコウノトリのえさとなる生物がいるということですね。もう絶滅の危機、一度日本からはいなくなったんですかね、歴史的には。毎年豊岡市内の各地区で放鳥があって、今ではこの地区でも普通にコウノトリが舞っているという光景が見られます。田んぼの中にえさとなる生き物が多いということは、結局お米作りのときに農薬をあまり使用していない、ほとんど使用していないからそういう生物がたくさん繁殖すると。実際この飛んでる田んぼの真下は無農薬の栽培の田んぼです。あと田植えの時期はコウノトリだけではなくて、ツバメの大群が、やっぱりよく分かるんですね、目いいんですね。その田んぼの上だけにこの大群がいるんですね。みんな急降下でタニシとかオタマジャクシ、ホウネンエビ、カブトエビ、ゲンゴロウの小さいような、そういうものを見ててもウヨウヨいるわけですね。そういったものをツバメはビュンビュン。これはなかなか写真で撮るのは難しいんですけども、非常に圧巻な光景でありました。この棒というか塔、これ実はコウノトリの人工巣塔ですね。この棒の上に人工的に作ったコウノトリの巣がありまして、コウノトリの気が向けばそこにちょっと止まってひと休みとか。たまにその上で出産、卵を産んだりするんですけども、それはたまに全国ニュースで卵産まれましたとか、残念ながら卵が落ちちゃいましたとかそういったものもあって、ちょこちょここういう巣塔っていうのが豊岡市内では立てられておるということです。

 これはフクノハナの産地での記事ですね、神戸新聞です。純米酒蔵と産地づくり。われわれこのフクノハナの生産部会、豊岡市、JA但馬、豊岡の普及センターと福光屋で消費拡大プロジェクトというのを立ち上げまして、その結果「コウノトリの贈り物」という純米酒を平成16年か17年ですかね、に開発いたしました。100%フクノハナの純米酒ですね。使い道としては出産の内祝いとかにご希望をいただいております。
 これは先ほどの米粉のお話にもあるんですけども、同じく先ほどのグループプラス地元の和菓子屋さんが、フクノハナの米粉を使用した上用まんじゅう、酒種まんじゅうっていうのを開発いたしまして、これがなんと優良ふるさと食品地方コンクール農林水産省総合食料局長賞、非常に長い、という賞をいただいたというふうに聞いております。残念ながらちょっと私は食べたことないんですけども、このように生産者だけではなくて、その周り、市をあげて消費拡大に取り組むと。大変この豊岡市っていうのは素晴らしい、兵庫県素晴らしいなというふうに感心しておる次第でございます。
 日本酒に話は戻りまして、皆さん日本酒よく飲まれる方、飲まない方、全然知らないよという方、たくさんいらっしゃると思うんですけども、日本酒、酒っていうのは酒税法という法律に基づいてきっちり管理されております。米、米麹及び水を発酵させてこしたもの。日本酒というのは必ずもろみをこさないと日本酒とは呼べません。こす前のもろみの状態では、これは日本酒とは呼ばないんですね。だから濁り酒っていうのありますけども、あれはちゃんと一応こしてるんです。ただこす網目が荒いので濁った状態で出てくる。それでも一応こしてるので、濁り酒も日本酒というジャンルに入ります。だからご家庭とかで作っちゃ駄目なんですけども、どぶろくとかああいう密造酒は日本酒ではないということですね。 この酒税というのは皆さんお酒飲まれるとき、日本酒でもビールでもワインでも必ず酒税というのが中に入っています。これは酒税というのは国税ですので大変厳しいです。インチキとかチョンボはまったくできません。大体お米これぐらいからお酒がこれぐらいできるという理論的な数字はあるんですけども、それをちゃんと国税局とか税務署は把握してますので、毎年必ずチェックが入ります。帳簿を見せなさいと。お米をどんだけ仕入れてどんだけお酒ができましたかというのを、必ず申告しなければなりません。途中でもろみを食べちゃったりとかお酒を大量にこぼしちゃったりすると、これまた申告しないといけませんし、法律上税金かかるまでは消失させてはならないというのを書いてあります。ですからたまに蔵の中を見学の方をご案内して、暗黙の了解でちょっと味見を、もろみの味見とか、来たらやっぱり搾りたてのお酒っていうのを飲みたいですよね、これ酒蔵でしか飲めないんですけども。ちょっとお味見をしていただいたりしてます。この搾りたてのお酒っていうのがまた非常においしいもんで、なかなか一般には流通しません。本当のわれわれの特権といいますか、われわれ毎日品質、利き酒で品質をチェックをするんですけども、基本的には利き酒っていうのは口に入れて吐き出す。これは利き酒なんですが、やっぱりあんまりおいしいんでゴクッと仕事中に入れちゃうんですね。ただ通常皆さんお仕事で、例えばお酒飲んで赤い顔して仕事されてたらどうですかね。大変なお咎めとかあるんじゃないですかね。特に公務員の方とか多分大変な処罰とかあるんじゃないかなと思うんですけども、われわれ酒蔵というのは赤い顔してて褒められるんですよね。「よく勉強してるな」と。これ本当にそうなんです。
 それから歴史。お米原料ですから、日本では弥生時代の稲作が伝来したぐらいから、この日本酒造られたんではないかというふうにいわれておりますし、3世紀の魏志倭人伝に日本酒に関する最古の記述が見つかっております。あと、もともと米から造ってる酒っていうのは、江戸時代までは濁り酒、このこすという作業はなかったんですね。本当のどぶろくのような濁ったお酒でした。それが江戸時代ぐらいから一般の無色透明な清酒へと変わったということでございます。
 また昭和初期に醸造アルコールとか添加物を加えるという手法が編み出されたわけですが、これは理由があって、昭和初期というと戦争時分でお米が少ないときでもありましたし、こんなお酒じゃなくてやっぱお米食べる方にやらないと駄目でしょうとか、そういう風潮が当然あったわけですね。ですが、国とすればご飯には税金かからないけど、お酒作ると税収が上がりますよね。だから国からすれば、食べる方よりも酒の方を作ってもらわないと税収取れない。だから国が主導でちょっとのお米からたくさんの日本酒を造れるように、アルコールとか添加物を加える手法を指導していったわけですね。だからもともとは米と米麹だけだったんです、水と。
 だからわれわれ純米化したのも、結局元に戻りたかったと。お米と水だけのお酒。いちいちお客さんに説明するときに、アルコールちょっとだけ入れましたとか。それなら最初から何もいらなくていいんじゃないのっていうこともありましたし、そういったことからもう昔に戻ろうやということで、2001年に純米化というふうに踏み出しました。これは社長からすると実は大変な決断でして、純米酒造りは非常に難しいんですね。あとから調整ができないんです。もう何も入れれないから。だから逆に添加物を入れれば入れるほど、もともとのお酒造りごまかしがきくというか、変な言い方すると。だからわれわれはあとから調整できないから、もう最初から勝負ですね。お米の原料処理から麹造り、発酵、仕上げ。で、毎日ぎりぎりしながら酒造りを行っております。
 当然日本酒は米からですけども、ビールとかホップとかブドウですね。こういう原料に酵母とか乳酸菌とか、そういった微生物をからめて発酵させた醸造酒が、それぞれ日本酒、ビール、ワインになるわけですね。これからさらに蒸留をしますと蒸留酒、日本酒なら米焼酎、ビールならウイスキー、ワインならブランデーというふうなお酒になってくるわけです。お酒の区分とすれば醸造酒というものと蒸留酒というもの、あともう一つは混成酒、いわゆるリキュールというお酒ですね。この三つに大きく分類されて、その中で細かくそれぞれのまたお酒の種類が定義されておるということです。
 日本酒の区分ですが、一番左、これはいわゆる米と水だけの純米酒ですね。それから右の方にちょっと青い部分、これが醸造アルコールと呼ばれる人工的に作ったアルコールで、いわゆる焼酎みたいなもんですね、人工的に作った小麦の焼酎ですね。この吟醸というのは、お米の磨き具合によって吟醸であるかそうでないか、お米を、玄米を半分ぐらいまで削って本当の真ん中のいいところだけ使ってるお酒、これはいわゆる大吟醸という非常に高価な一升瓶で5,000円とか1万円とか、そういった商品になります。逆にこのアルコール半分ぐらい添加したもの、糖類無添加酒ですね。それから一番右、もう半分以上を人工的に作ったアルコール、これ三倍増醸酒と呼ばれるものがあります。当たり前ですけども、アルコールが入っていれば入っているほどコストは低いですね。ですから商品としても値段は安くなっていきます。当然純米酒というのは、あるいは純米吟醸酒、純米大吟醸酒というのは、当然通常のものに比べると値段は高いお酒ということになります。
 この一番右の三倍増醸酒ですが、これはちょっとあまりにも日本酒とはかけ離れているんじゃないかというような意見がありまして、2006年からは三倍増醸酒というのは日本酒ではなくて混成酒、いわゆるリキュールという区分になりました。ただ混成酒という区分が悪いとかという意味ではなくて、あくまでも区分として日本酒ではないということですね。せっかくお米と水だけで作ったお酒が、本当に3割しか入っていないということですから、これは普通の純米酒と同じ土俵にはちょっとあまりにも違うんじゃないかということで、こういう取り決めがなされました。
 日本酒の内訳です。グラフを見ていただけるように、純米酒というのは、この世の中に流通している日本酒の中の1割強しか実はありません。残りの9割は米と水以外に何らかの添加物が入っているお酒ということになります。ですから皆さん日本酒買われるときは、できるだけこの純米酒というものをちょっと覚えていただいて、購入していただくようにしていただければお米の消費アップにもつながるんではないかと思いますし、ただ添加してるお酒が悪いという意味でもありません。アルコールを添加することによって、例えばもっと口あたりのいい軽いお酒が飲みたいとか、そういった方がこういうアルコールを添加したお酒を好きという方もいらっしゃいます。あくまでもこれは原料によっての区分ですね。われわれはこの純米、1割の部分のお酒しか作っていません。大変中身と質にこだわった酒造りをしているということをお伝えしておきたいと思います。
 これは日本酒のタイプ分類です。日本酒、大体大まかにこの4タイプに分かれるかと思われます。香りの高いタイプ、これは吟醸酒とか大吟醸とか、割とあっさり系ですね、香りが高くて。ちょっとフルーティーな感じの香りです。どちらかというと食前酒に向いたお酒で、お料理も割と脂っこいものはちょっと、あまり相性は良くないかなというタイプのお酒です。割と高級なお酒になります。その下、軽快滑らかタイプ。これは生酒とか非常にフレッシュな、あるいは口当たりの軽いお酒、そういうタイプ。これもお料理との相性は割と幅が広いですね。これはどちらかというと食中酒ですね。お料理と一緒にということです。これもどちらかというと、ちょっと脂っこいお料理は今一かなと思います。それから右、こくのあるタイプ。これは世の中流通しているお酒が非常に多い、料理との相性も非常に幅広い純米酒とか本醸造酒がこれにあたります。これはお料理の方は割としっかり味付けのされたものが合うんじゃないかというふうに思います。最後に右上の熟成タイプ。これもあんまり流通はそんなにしてないんじゃないかなというふうに思います。いわゆる古酒、熟成酒ですね。われわれの業界では3年以上熟成させたものを、長期熟成酒とかいう言い方をします。うちの方でも商品として一番古いのは30年酒ですかね。実際世に出していない貯蔵タンクの中にまだ眠ってるものは、1970年醸造、42年後のお酒がまだ商品としては出してません。そのうちに、50年、60年いつ出すかまだ分からないというお酒が、タンクの中にまだ眠っております。こういったお酒は非常に料理とあわせるというのもなかなか難しくて、合わせるとすれば非常に動物性脂肪の多い脂っこい豚の角煮とか、そういったタイプがあうんじゃないかと思いますし、どちらかというと食後デザート的に飲まれるお酒かなと思います。値段もちょっとお高めのものが多いですね。
 日本酒は非常に用途の幅が広いお酒でして、いわゆる一般的な日常的に飲まれる純米酒とか本醸造っていうのは、冷から熱燗まで大体どの温度帯でもいけると思います。吟醸とか生酒系というのは、どちらかというと冷で飲むのが適していますね。熟成というのが冷はちょっとあまりおいしくないと思います。常温から熱燗ぐらいが向いてるんじゃないかと思います。ただわれわれが燗といっても、本当に日本酒をおいしく飲めるお勧めしてる温度というのは、40度ぐらいなんですね。あんまり冷たすぎてもあんまり熱すぎても、香りと味のバランスというのが崩れてしまいます。人肌から40度ぐらいのちょっと物足りないなっていうぐらいが、実は日本酒は一番楽しめる、その商品の味わいが楽しめる温度というふうに勧めております。体にとってもあんまり冷たい冷よりも、ちょっと燗ぐらいにした方がお体に優しいと思います。

 これ実際酒造りを行っているところで、左はいわゆる櫂入れというものですね。この櫂を入れることによって、お米を潰しているわけではなくて、中の温度が均一になるように回しているという作業ですね。右側は、これはちょっと大吟醸とか高級なお酒はこのように一袋、一袋もろみを詰めて、その自然の重さで搾るという作業を行っております。われわれはお酒搾ることを醸造という言い方をします。
 これは搾りたてのお酒がほとばしっているところです。毎日のようにわれわれの蔵ではこのように、ジャバジャバ絞りたてのお酒が流れてくる中で、この右隅に写ってるわれわれの杜氏が、さっき言いましたように品質チェックですね。いい酒になってるかなとかそういったものを確認しております。
 あとわれわれ蔵人とか社員がこの杜氏のあとに品質のチェックをして、ちょっとあまり今一のお酒だったら、どの辺がちょっとまずかったかなあとか、工程管理とかをチェックしたり反省したりするところでもあります。
 これは左側のわれわれの貯蔵タンク、あと右が木桶ですね。実は仕込むこの木桶のタンクというのは、昔の日本酒造りは全部このタンクでやったんですが、今ではこういう木桶のタンクで日本酒を造ってるところはきわめて少ないです。なかなかないんですが、業界の中で木桶保存会という数十蔵組織があるんですが、その中にわれわれも入りまして、2、3年に1回はこの木桶で酒造りをしています。なかなか発酵管理は難しいです。ですがほんのりこの杉の木の香りがついた、お好きな人は好きなんですけども、そういうお酒ができあがります。
 日本酒の健康と美容効果ということで、ちょっと魅力をお伝えしたいなと思うんですけども、まず健康面。糖尿病、癌、心臓疾患などいろいろ抑制、防止する効果があると。これはわれわれが勝手に言ってるわけではなくて、本当に学者先生の研究でこれは本当に証明されております。
 もう一つが美容面ですね。保湿効果、血行を良くする、冷え性、肩こり予防で、美肌効果、アミノ酸が肌を保湿、酒風呂が老廃物を排出、保温、保湿に役立つと。で、老化防止、抗酸化作用などフェルラ酸、フェルラ酸っていうのはお米に含まれている物質で、お米のポリフェノールというふうに認識していただければいいかなと思います。血液の循環も良くなり老化を防ぐ。これ全てそういう研究機関とか大学の先生とかから、このような報告が実際に出ております。いいことだらけの日本酒だと思います。早速今日からちょっと飲まずにはいられないんじゃないかなと思います。
 これは昔から言われてることなんですけども、杜氏さんの手は白くすべすべ。これは麹をいつも触ってるから本当につやつやですね、杜氏の手って。光っています。それから料亭の女将さんの肌はつやつや。これは女将さんというかお酒こぼれちゃったりしますよね。そういったときにこぼれたのをちょっと触って、手や顔につけたとそういうことです。芸子さん。これは金沢にお茶屋街がいくつかありまして、芸子さんもたくさんいらっしゃるんですけども、白粉塗る前に日本酒をはたくんですね。そうして塗るとのりがいいと。是非女性の方試してみてください、メイクの前には。肌がつやつやの女将さんの方も載せたかったんですが、ちょっと断わられまして、残念ながら杜氏の手と金沢市が提供した芸子さん方ということで、ご了承お願いしたいと思います。
 とはいえ日本酒の出荷量というのは、1973年から2010年までですけども、40年前の3分の1。こんなに減ってます。でも減ってるのは日本酒だけでは実はなくて、全ての酒類はやっぱり減ってます。一時ワインブームとか芋焼酎ブーム、その前には地酒ブーム、大吟醸ブームっていうのもあったんですけどもね。お酒類全体がもう減ってますね、残念ながら。われわれ日本酒の酒蔵もピークは4,000蔵ほどありました。今では大体1,500蔵ですね。それでもまだ多いと思うんですけれども、それだけ右肩下がりで激減しておりますが、2011年、去年3月1日に大変な大震災がありましたが、去年だけは東北の応援をしようということで、東北のお酒が爆発的に売れましたので、業界的には2010年に比べて2011年はちょっと増えました。でも今年また下がってます。本当の短期間ですけどもね。だからまだちょっと底は見えていない状況ですが、30年後、50年後はもっと減るんじゃないかというふうにも言われております。 減っていく背景にはいろいろあると思うんですけども、今やっぱり50代、60代以上の方っていうのは、こっちからあえて「日本酒飲んでください」って言わなくても、勝手に飲んでくれるんですね、もう若い頃からそういう習慣ができているというか。今の若い方、20代とかこれからお酒を飲む10代の方々っていうのは、日本酒に限らずお酒、アルコール自体をあまりとらないっていう傾向があるようです。好きな人は好きなんですけども、全体としてもうわれわれの時分は、お酒のどんだけどっちがたくさん飲める、どっちが強えとかそういう勝負をして、多い方が格好いいとかいうのがあったんですが、今の若い方はそうではないんですね。あんまりお酒をたくさん飲むっていうメリットがないと。酔っぱらってくさい、大トラになってみっともないとか、そういうイメージがやっぱりあるそうなんですよね。そういうのもありますし、そのほか景気の面もあるんでしょうけども、いろんな要因があって残念ながらこれだけ減っておるという状況です。
 また最初に飲んだ日本酒があまりおいしくなかったっていうのもあると思うんですね。普通に大衆居酒屋さん行ってちょっと日本酒飲んでみようかなと思って、飲んだら何かくさいな、これおいしくないなと、出会ったお酒がおいしくないと、次からまた日本酒、もっとたくさんおいしいお酒世の中あるんですけども、飲もうという気がおこらないそうですね。だから最初に出会ったお酒とか食べ物もそうでしょうけども、非常に大事だなということは認識しておる中で、われわれも一生懸命若い方向けにも合うようなお酒ということで、一生懸命開発に頑張っておる次第でございます。
 それはわれわれも日本酒だけでやっていくのはなかなか厳しいということで、何かできないかということで、まずメインとなる酒類事業ですね。日本酒、焼酎、リキュール、みりん、料理酒を展開しております。そのほか発酵の応用をさせて、発酵食品事業っていうのをやっております。酒かす、これは前からありますけども甘酒、お酢。酢も日本酒からできますからお酢ですね。酒蔵の水。ペットボトルで展開してます。あと去年ブームになった塩麹、これもわれわれ麹は町でも売れますので、手造りの塩麹を先日発売いたしまして、ブームとすればちょっと落ちたかなということもあるかもしれませんが、やっぱり出した途端よくまだ売れます。それから奈良漬とか、かすに漬けた奈良漬ですね。
 健康美容事業の方では基礎化粧品ですね、ローション、乳液、クレンジングとかあと美容液。その辺はたくさん展開しております。あとコラーゲンドリンクとか酒風呂。 この酒類事業につきましては、残念ながら今言った右肩下がりなんですが、食品の方とか美容事業はいやらしい話右肩上がりです。本当にノンアルコール志向というか、非アルコール志向っていうのが大変強いです。ですからあんまりこれだけたくさんの事業展開している地方の酒蔵というのは、あんまりないとは思うんですけども、とにかくわれわれも発酵の力で何とかこういう事業展開をしておりますし、ここには載っておりませんが、もう一つ店舗事業というのがありまして、東京の方でも六本木のミッドタウンとあと高島屋二子玉川店さんの方に、一応テナントで出店しておりますので、またよろしくお願いしたいと思います。
 先ほどの事業拡大に示しましたように、われわれ研究開発発酵技術で日本酒を混ぜて作りまして、それからリキュールとかみりんとか焼酎も展開しております。さらにそのあと健康食品、機能性食品あと化粧品を今ここまで展開しております。この先将来的にはQOL、医療食品分野まで、この発酵の力でもっと事業展開していきたいなという野望はあります。
 これはものづくり日本大賞ということで、日本酒の発酵技術応用によるスキンケア化粧品の開発ということで、国から大変名誉ある賞をいただきました。これはものづくりでもいろいろあるんですけども、われわれ発酵からどんどんいろんなものを生み出しているんですけども、そういったものが一つ国に認められたというのは、非常にありがたいというか自信をもってこれからやっていけるんだということで、今社員みんな元気で頑張っております。
 最後ですが、これがわれわれのキーワード。米かける発酵ですね。これがうちの柱、スローガンというかキーワードになっております。今後もわれわれはこの米かける発酵というキーワードで、お酒だけじゃなくてそれを応用させた商品、何か活用できないかなというのを常に考えながら、これからも頑張っていきたいと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。皆さん日本酒を飲んでください、よろしくお願いします。ありがとうございました。

文責:ごはんを食べよう国民運動推進協議会事務局

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