ごはんを食べよう国民運動推進協議会

講演会 「伝えたい、ごはんと和食の底力」(要約)

とき 平成17年7月12日(火)15:00〜16:30
ところ 全国町村会館ホール

東京農業大学 応用生物科学部 教授 小泉 武夫 氏

食育とは文化を教えること

日本人はやはり日本食が一番合うし米が一番合うというお話をこれからします。今よく子供達に食育ということをいいますが、食育っていうのは何を食べさせるかとか何をしようかとかじゃないと思いますね。食べ物のことを教えるとかそんなことじゃないと思う。私は小学校に行ってよく子供達にお話します。その時、「その国々の人たちがそれがあったらほんとに助かるなぁというのを文明と思ったらいいよ。例えば、電気はどこの国にもある。そういうようなものを文明という。それで、アメリカの人の顔と日本人の顔は違うし、こういうのを民族の血というんだけど、その人たちは全部文化を持っていて民族というのがすごくはっきりしている。その人たちのその国の人にしか語れない、当てはまんない、その人たちの住んでる土地にしか語れないことを文化というんだよ。」と言ってあげる。その国の文化を大切にする心が大事なんです。文化と文明ということをちっちゃい時から教えないといけない。

「いただきます!」の意味

この間ある団体が東京都内で、今一番食べたい食べ物、または学校給食に出してもらいたいものというので子供達(小学校の高学年)に5つ書かせたそうですよ。そしたらその中に、調査の仕方にもよるんだろうけど、日本の食べ物ひとつしかないっていうんですよ。1番から10番で日本の食べ物で子供達に一番人気があったのが7番目に回転寿司が出てくるって言うんですよ。これでは、完璧に日本文化というのはどこへ行ってしまうんだろうと思います。

こうした問題について、3年前に東洋経済新報社から出版した『食の堕落と日本人』では、非常に厳しく強烈に書きました。その中で、日本人はあと10年後おそらく餓死するだろうと、あと10年後平均寿命がどんどん下がってくるだろうと、2つを予測しました。これがまず1つ当たりました。平均寿命は、下がり始めました。もうひとつの餓死という問題。これは可能性ありますね。何故かって言ったら日本に食べるもの無いんですもの。食料自給率はカロリーベースで国は今40%と言っているけど、これ5年前ですよ。細かい数字では、日本はもう40%を切っているんですよ。それと水産が獲れない。水産庁の課長に聞いたら、かつて世界一魚を獲って、世界一魚を食べて、世界一魚を売ってた日本が今、世界一魚を買っているんだそうです。

昨年、新たに農業に就業した人が5,000人に満たない。こんな国はもう無いですよ、はっきり言って、非常に危ない。今春の全国の農業高校の卒業生で、農家を継いだ人は400人だそうです。これはもう農業の魅力とかを全然この国は作ってこなかった結果です。農業を犠牲にして、工業立国になって物を売って生活がよくなってきたけれど、結果的に、どんどん外国から農産物が入ってくる状態になった。ところが、実は日本はほとんどお金が無くなっちゃっている。報道によると、赤ちゃんが一人生まれると570万円の借金ができるんだそうですね。金は無くなった、食べ物作る人もいなくなっちゃった。しかし現実には1億2千万人が食っていかなきゃいかんですからね。食べ物を持ってない国というのは一番惨めですよ。農薬の問題だとか、BSEの問題だとか、遺伝子組み換えの問題だとかある中で、そういうものを食べなきゃいけなくなるでしょうから。

日本の鮭って美味しいんですよ。北海道の釧路ではもの凄くおいしい鮭が獲れるんだけど、売れないんです。何故かっていうと価格破壊って馬鹿なことやっちゃったんですね、この国は。今、日本で安い幕の内弁当いくらだと思います?218円ですよ。怪しいと思いませんか?理由は、ほとんど今は養殖の鮭だから。南米で抗生物質をかけられた鮭が問題になっている。北海道で獲れた鮭は、本当は日本人が食べるべきなんですよ!でも、日本では高くて買い手がつかない。買い叩かれて、中国で安い人件費で缶詰にして世界一美味しい鮭として、ヨーロッパ・アメリカに行ってるんですって。

日本の食生活の激変

昭和40年と平成12年と比べますと日本人の肉の消費量が5倍近く増えてるでしょ。油の消費量も4倍以上。かって地球上にいた民族で、たった40年という短い期間に、これだけ食生活が激変したのは日本人だけですよ。民族の食っていうのは、保守的でなきゃダメ。体が対応できないんだから。ごはんを中心とした和食を食べなきゃ日本人は強くならない。みんな逆のこと、肉食えばスタミナつくんだ、肉食えば元気になるんだって逆の事言ってんだ。食べ物ってのは食べて癒されるものと食べて疲れるものがあるの。その国民が食べ物に癒されるのはその民族の食事で癒されるんですよ、外国のものを食べたってそのときは美味いけど、それは癒しってもんじゃないんですよ。日本人の歴史って何千年もあるでしょ、たった40年で、コロッと食生活が変わってきちゃった。これは、私に言わせると、ある日突然に草食性動物が肉食性動物に変わった、それくらいの変わり方をしている。その民族にはその民族にあった食べ物があるというのは、遺伝子レベルによって考えていく必要があると思いますね。民族の遺伝子ってあるわけですよ。だいたい日本人の顔とアメリカ人の顔が全然違うんだから、これみんな民族の遺伝子ですよ。その中で一番大きいのは食べ物。食べ物に対する遺伝子なんですよ。日本人の場合には非常に質素な食べ物を食べてきたから、体内での食べ物の滞留時間が非常に長いと言われてきた。これは全部遺伝子ですよ。日本人ね、牛乳飲んだ経験ないですよ。それがこの20、30年ぐらい前から牛乳をガブガブ飲むようになった。それだって追いつかないですよ、日本人の体は牛乳に。牛乳に対しての適応性がないんだもん。お酒もそうですよ、日本人は世界で最もというくらいにお酒に弱い民族です。これも遺伝子です。ところで、肉の消費が何で増えてきたと思います?美味しいこと、安いこと、そして、なにより肉料理ほど簡単なものはないってことですよ。そういうように非常に楽な方に楽な方にみんな行く。楽な方に行くってどういうことか、日本の生活文化を否定することですからね。民族の底力ってのは、食べ物によってくる。そういう意味からすると、ごはんという世界、和食って世界を、日本人は、これからもっともっと普及しなきゃいけないと思いますね。

日本人の米の力はすごい!

 戦争直後、アメリカから言われたこと、「もう日本人は米やめてパンにしろ」「みそ汁やめて牛乳にしなさい」「魚やめて肉にしなさい」。こんなことみんな言うことをきいてたら日本人の平均寿命は、80歳近くまでいかなかったですよ。その時「ハイ、わかりました」って日本のごはんをやめたり、和食を全部やめたりしておりません。アメリカの言うことばかりきいていたら我々は平均寿命70歳までいってない。世界の人たちが今、日本のごはんを中心にした和食をものすごく評価して見習おうとしている時に、何で日本人がアメリカの方にどんどん行かなきゃ行かんのか、これが民族の不思議さですね。みんなまだコンプレックス持っているんですよ、アメリカとかいろんな国に。堂々とやらないといけないですね。私は、日本が大切で好きだからね。日本の食べ物が好きだから、だから言ってる。 本当に米というのは力を出させてくれます、この民族に。戦後の復興期、ステーキ食べて、ビフテキ食べてがんばったか?そうじゃない。日本人に一番合っているのは、ごはんを中心とした和食しかないと私は思っています。国はもっとごはんを食べる政策に、将来のこの国の発展とか子ども達の教育にもっともっと予算を出さないとだめだと思います。もっともっとごはんを食べさせなきゃ、国が。

漁食民族としての日本人と鯨

今ひとつどうしても和食を考える上において魚文化というものを考えなきゃいかんと思いますね。日本は水産立国ですからね、私は、ある面ではこの民族を稲作民族と同時に、魚食民族だと言っています。日本人は稲作民族であり、魚食民族である。物凄く魚をいっぱい食べました。今、大問題になっているのが鯨なんですね。昭和36年頃、日本人の動物性たんぱく質の62%は鯨に依存していたんですね。日本人を守ってきたなあと思いますでしょ。鯨の次に何が起こるか、我々日本人の食卓に大きな影響が出ます。ついに「マグロも獲るな!」となってきた。今、水産庁で対策のための委員会も出来ています。

和食の四つの基本

今、和食の世界で私たちは4つのことを忘れてる。1つは海草ですね。ひじきとか。2番目は根茎ですね。人参とかサツマイモとか。3番目は魚です。米と魚って物凄い関係がありますね。米と肉より、米と魚のほうが関係が深い。4つ目は豆ですね。特に大豆。これら4つが日本人を強くしたごはんと関係の深いものなんです。日本の原風景の一つは、水田の周りに大豆を植えることですね。これはたいへんな教えだと思います。日本では昭和40年代まで大豆を水田のあぜ道に植えていました。あれはごはんとみそ汁なんです。次に、ミネラルですね。ミネラル不足は本当に病気を起す。

みそ汁は肉汁

大豆は大したもんなんですよ。大豆はたんぱく質が多いので畑の牛肉って言うけど、大豆に失礼ですよ。物凄く大豆の方が多いから。「大豆=肉」と考えた場合、みそ汁は実は肉汁なんです。味噌は大豆から作るんですよ。「今日はめんどくさいから、みそ汁に豆腐だけ入れよう。」これは、肉汁なんです。本当ですよ。昔は納豆入れてたから、肉汁に肉入れてた。ごはんと一番合うのは、みそ汁でしょ。ごはんというのは単に体にいいだけじゃない、家族を温かくする。家族の絆も強くする。健康にもいい。62歳の私が健康なのもごはんのおかげです。どうもありがとう。

文責:ごはんを食べよう国民運動推進協議会事務局

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