●ごはん・おむすびとの出会い
千葉
 今日はロザンナさんとともに、日本の豊かな食文化について話し合ってまいりたいと思います。
ロザンナさんはイタリア料理をはじめ、いろいろなお料理の本を書いておられ、とてもお料理上手な方として知られています。ですから、私たち日本人が気づかなかったような日本食の魅力を教えてくださるのではないかと、実は私も大変期待しております。まず最初にお聞きしたいのは、日本の食文化の中心はお米ですが、ロザンナさんとお米との最初の出会いはいつ頃だったんでしょうか。
ロザンナ 7〜8才の時にイタリアでチャンバラ映画を観たんですね。それで、侍の人の食事の場面が何回も出てくるんですが、いつも同じ物しか出てこないんです。それがどうも味の無いようなこんもりとしたごはんと、口に入れるとポリポリ音がする丸い物だけなんです。だから、日本はなんて貧しい国なんだと思った記憶があります。しかし、日本に来てみて白いごはんを初めて食べたとき、味が無いどころか、何も味が無いところがものすごく味があるじゃないかと、すごくショックを受けましたね。
千葉 それでは、本格的に和食を食べたのは、17才で来日してからですか。
ロザンナ 白いごはんを初めて食べたのは、日本に来てから1年後ぐらいですね。一人でアパートに住んでいて朝早い時とか夜遅く帰ってくると、いつも大家さんがおむすびを作ってくれていました。ごはんは、固まっておむすびにもなり、塩だけでもこんなにおいしいんだなと、初めて知りました。

●「お米」の持つ意味
千葉
 お米は、古代の人にとっては本当に贅沢な食べ物で、神様にお供えをして、お祝いの時にしかお米を食べなかったみたいです。それが、今私たちはおかずと分けて、お米を主食にしているんですね。
ロザンナ それを平気で残したり、捨てたりしているんですよね。イタリア語でお米はリゾと言うのですが、笑いとか福とかほほえみという意味なんですね。そういう意味合いがあるので、結婚式にはお米を投げるんですよ。それは福が来るとか温かい幸せな家庭が作れるということでお米を投げるそうです。
千葉 やっぱりお米というのはありがたい物だったんですね。イタリアでもお米を結構食べるそうですね。
ロザンナ 食べるだけでなくて、わずかな地域ですけど、いろいろな種類のお米を作っています。
千葉 イタリアではどんなお米の料理があるのですか。
ロザンナ リゾットが代表的ですが、アランチーニといってよく前菜に出るのですが、リゾットみたいなものをひと口大ぐらいのボールにして中に溶けるチーズを入れ、フライにして揚げるんです。日本の揚げたおむすびみたいなもので、味が付いており、カットするとチーズが溶けていて、トマトソースがすごく鮮やかで、よくお弁当に入れるんですよ。お米は天才なのでいろいろな工夫をすればいいと思いますよ。
千葉 ロザンナさんは、3人のお子さんにお弁当を作られてきたのですか。
ロザンナ 17年間ずっと作ってきました。イタリアの場合小さなパンにチーズとかハムとかを挟んだのが唯一のお弁当になるのですが、日本の場合お弁当にいろいろなものが入っているので、最初はどうやって作るのかなと本も買いました。でも、結局一番おいしいのはおむすびと卵焼きと唐揚げの組み合わせですね。冷めてもおいしいものは限られていますが、その点おむすびは、まぜごはんでも白いごはんでもおいしいですよ。
千葉 最近の子供は白いごはんが食べられず、ふりかけなんかをかけないと駄目らしいですね。家庭でも先におかずを食べて白いごはんだけが残ってしまい、それでふりかけをかけて食べるらしいです。
ロザンナ おいしい白いごはんの味を知らないというのは悲しいですね。

●イタリアの食生活
千葉
 ロザンナさんのお宅は朝から和食をしっかりと作っているのですか。
ロザンナ イタリアの場合、朝食は軽くカフェオレとちょっとしたパンとかビスケットを食べて出かけ、昼食がメインになるのです。私の小さい頃は子供も父親もお昼に帰宅してきちんと食べるんです。そして2時間ぐらいしてまた職場や学校などに戻って行きます。お父さんが座らないとどんなに子供がお腹をすかせてもいただくことができないのです。ですから、昔のイタリアのお母さんは、父親が帰る頃を見計らって食事を作っていました。
千葉 今のイタリアのお母さんはどうなんですか。
ロザンナ 今では全然違いますね。残念なことに、行くたびに寂しくなります。世界的に家族がバラバラになっていますね。お昼はみんな帰らなくなってきて、お母さんも働いているから、おかずを買ってきて食べさせるようになってきています。
千葉 イタリアも随分変わってきているんですね。時間をかけて食事をしてファミリーでわいわいしながら食べるのかなと思っていたのですが。
ロザンナ 30年前はそうだったんですよ。
千葉 お袋の味って皆さんこだわりをお持ちだと思うのですが、今の時代は「お」が抜けて、レトルトとか「袋」の味になってきているような気がしています。ロザンナさんのお袋の味というのはどのようなものですか。
ロザンナ 末っ子だったので、料理は日本に来るまで作るようなことはなかったです。しかし、母親がきちっと料理を作ってくれたので舌ができていたのですね。だから料理を作る時でも、作り方はよく分からなかったのですが、味の違いはよく分かりました。だから、何度か失敗しながら、ちゃんとした料理が作れるようになりました。この点は母親に大いに感謝しています。

●豊かな日本の食文化
千葉
 やっぱりお母さんから伝承してきたのがロザンナさんのお袋の味ですか。さて、最近では外国でも日本食が大変人気があって、日本食レストランが流行っているのですが、日本の食文化のどういう点が魅力に写るんでしょうか。
ロザンナ 一番はヘルシーというイメージがまずありますね。日本の食事は、ごはんもそのままで何も入っていないし、油もあんまり使わず、醤油味が中心です。だから健康にも良くて、ヘルシーでダイエットにもとてもいい。イタリアでは、ごはんは野菜扱いなんですよ。
千葉 アメリカでもそうでした。
ロザンナ 野菜だから太らないという感覚があります。しかし食べ過ぎると駄目ですが。でも、ごはんに合わせる日本的なおかずであれば、カロリーは確かに少ないですね。日本食はバランスが本当にいいですね。
千葉 お米を食べると太りやすいかどうか調べてみたんですが、ごはんは食パンの2倍の水分を含んでいて、実はカロリーはパンの6割しかないそうです。肥満症とかダイエットにも一番いいらしいです。良質の植物性のタンパク質が多いし、糖質もビタミンも多いんですね。
ロザンナ 絶対もっと食べないといけないと思いますね。
千葉 食生活でどういうところに普段気を使っておられますか。
ロザンナ やはり、健康にいいもの、バランスがいいもの、偏らないことですね。それと、塩と水は絶対いいものを使うようにしています。
千葉 日本の食文化では旬のものを食べるということが大切にされていますが。
ロザンナ それはイタリアでも同じです。たまたま冬にイタリアに帰った時、トマトが食べたくなって八百屋で買ってきたところ、父に「なぜトマトが出来ない季節の高くてまずいものを買ってくるんだ」と、ものすごく怒られてしまいました。確かにトマトは夏のものだから、このトマトの栄養を調べたって全然ちがうだろうねって。昔の人は間違ったことを言っていないと思いました。
千葉 最近子供達がきれやすいとかいろいろ言われていますが、やはり食生活も関係しているのでしょうか。
ロザンナ 絶対あると思いますね。
千葉 ちょっと調べて見たのですが、子供にとってごはんがすごく大事と言われるのは、実は頭が良くなる元でもあるからだそうです。お米のデンプンは、脳のエネルギーであるブドウ糖になって脳を非常に活性化させるらしく、お米ほど優れたブドウ糖になるものはないそうです。それを調べてから、もっと食べさせないといけないと思いました。

●ごはんを食べよう国民運動への期待
千葉
 最後に、このごはんを食べよう国民運動にどんなことを期待したいですか。
ロザンナ やっぱりおいしいごはんがある家にはおいしいおかずもあって、おいしい会話があるんですね。数年前から田んぼが荒れてきていますが、とても悲しいですね。日本の食文化であるお米を減らしてしまうことは、自分の文化を無くしてしまうことと同じです。ごはんはあらゆる食材に合う天才であり、親はごはんのおいしさをもっと子供に伝えていくことが大切です。そうすれば荒れた田んぼもなくなるし、元気で精神的に裕福な子供に育っていくことと思います。ですから、できるだけ多くの人がお米の持つ意味やごはんのおいしさを子供達に伝えていってもらいたいですね。
千葉 この運動の輪が大きく広がっていけば本当にいいですね。本日は長時間にわたり、貴重なお話を聞かせていただきありがとうございました。


これは、ごはん食べよう国民運動推進大会におけるトークショーの内容を取りまとめたものです。

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