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ごはんを食べよう国民運動推進協議会設立記念座談会
1 と き 平成11年4月23日(金)14:17〜15:30
2 ところ 都道府県会館 402号室
3 出演者 中村 靖彦 (日本放送協会解説委員)【進行】
渡辺 文雄 (俳優)
木村尚三郎 (東京大学名誉教授)


4 発言要旨(抜粋)
中 村
 ごはんとか米というのは、私の印象では、全国何処に行っても俺のところの米が日本一だと、こういう声が多いですね。

渡 辺
 旅をしまして、米・ごはんというのは、その土地というよりも恐らく泊まる家によって差があるように思います。やっぱり非常に良いごはんに出会った時は、文句無しにそこの土地に好感を持つ。ですから、うちの町に来たらおいしいごはんを食べさせてやるという気概を持ってお米・ごはんの問題と取り組んだら、町おこし・村おこしの3分の1は方が付くような気がしますね。

中 村
 食材で俺のところが一番だというものが他にありますか。

渡 辺
 僕は4つあると思っています。まずお米ですね、ごはん。それと今頃の時期でいうと鮎。それからお味 噌。これは本当に何処へ行ってもうちの味噌はと言いますね。これはもう村単位ではなしに家単位で言います。それから、不思議なのは里芋。里芋は必ず何処へ行ってもうちの里芋はと言う。やっぱり今まで行ったことの中で共通なのは、その土地に生まれたもの、その土地に生えているものは絶対に旨いですね。

木 村
 大体何処へ行ってもですね、土地の物はおいしいですよ。渡辺さんがおっしゃいましたが、土地のものというのは、土地の空気や水或いは温度とか湿度に、ピタっと一致しているのですね。その意味では、全国何処へ行ってもその土地の米が一番おいしいはずなので、それを東京その他に出荷することを考える前に、その土地で食べていただく、食堂であれ、レストランであれ、旅人に食べていただく。これをこれから中心に考える時代じゃないかと思いますね。

中 村
 今度の運動のきっかけは、震災の時のおにぎり、おむすびの味だったということですが、おにぎりは不思議なものですね。不思議なというのは変だけども、本当にあれだけのものでおいしいんですね。

渡 辺
 おいしいものが世の中にいっぱいあり、おいしいと一言で括っていますけど、おいしさの質ということをちょっと考えてみた方がいいと思う。僕は戦災の時のおにぎりもそうだし、戦後の焼け跡で食べた闇のあの白い米は胃袋を満腹にするだけでなく、間違いなく心というものを満腹にしてくれました。やっぱり飢えというのは2か所あって、心の飢えというのは絶対に有ります。だから心の飢えを満たすというアングルでやっぱり今の消費拡大という問題も取り組んで行ったら、門が開くような気がしますね。

中 村
 確かにおにぎりというのは、非常に安心感を与える。まさに今度の震災の時の各地域からの援助というのは、そういう意味で良かったんでしょうね。

木 村
 おむすびというのはお米を結んだものなんですが、同時に心も結んでおりますね。すめらぎって言い方が天皇についてありますが、あれはすぼめるっていう意味で、ばらばらの心を一つにすぼめるのをすめらぎ或いはすべらぎと言うのですね。元になっているのは、皇室のお米です。昔から稲作があって、そしてそれを元に人々が結ばれたんで、別に権力的に上から押さえつけて一つにしたんではないのですね。そのようなおいしいものがあって、ごはんがあってお互いに結び合うという古来からの伝統がずっと今まできている訳です。これは要するに人と人との心が結ばれるという意味では日本の文化、宗教の原点になるものではないかと思いますね。

渡 辺
 日本人とお米は長い付き合いでしょ。だから人間の方で変に甘ったれているとこがありますね。お米と人間の付き合い方、もう1回見直して、きちんとお米の持っているものを引出す努力ということを人間がしないといけないのではないでしょうか。これだけ皆さんごはんに関心を持ち始めたならば、今がチャンスだから、そういう運動を展開するものいいんじゃないかという気がしますね。

中 村
 お米というのは勿論単体でおいしいのもあるんだけれども、用途に合ったブレンドをして出すというのもある。もうこれだけいろんな食生活になってきた時は、やはり用途に合った使い方を、僕は考えた方がいいと思います。

渡 辺
 古い米でもいいから炊き方を皆さんにきちんと教えてあげないといけないと思いますね。こんなに違うのかと思うくらい違いますよ。大体食べ物の味は、並べて比較して食べないと旨いか不味いか分からないですよ。物の変化の仕方はじわじわでしょ。だから、いつの間にやら変なものを食っているんですよ。食べ物の味っていうのは、よくおふくろの味だとか何とか言いますが、あれはおふくろの苦労の味ですよ。情緒的なこと言うなよと言われちゃうかも分かんないけど、でもやっぱりその部分を入れていかないと。食文化というのは情緒的な部分が絶対ありますからね。それを外しちゃって、食文化じゃないと思うな。文明ではあるかも分かんないけど。

木 村
 ここで考えてもらいたいのは、食べている物は餌じゃないので、これは体と心を養う命の糧なんですから。そういう意味では食べるということに、或いは食べ物を作るということに、情熱と時間をかける時が来ている筈なんですよ。何よりもおいしく食べ合うということに時間とエネルギーとお金をかける時に来ているので、簡便であればいいというものではないと思うんです。もう一度国民運動の際に見直したい。

中 村
 つまりそれは食卓なんですよ。食べるということは、ただ体の中に入れるだけじゃなくて、コミュニケーションをとるということでしょ。それが無いわけですね。

木 村
 フランスでは、コンヴィヴィアリテがあっちこっちで熱っぽく語られている。コンヴィヴィアリテというのは、コンヴィーヴは飯を食い合う仲間のことで、飯を食い合う仲間のように親しみ合って生きていく人間関係、平たくいうと共生です。これが語られていて、同じビジネスランチとかビジネスディナーでも、メインディッシュが出るまでは仕事の話をするのはやめよう、お互い楽しい話題をしてね、我々は単にビジネスの付き合いではなくて、いかに個人的な友達であるかということを強調しようとしている訳ですね。これはヨーロッパの修道院もやはりそうで、食事のときは沈黙を命じられているのですが、しかし食べたり飲んだりしているうちに、自然に心が開けてお互い出身地の違いとか元の商売の違いとか或いは年齢の違いを超えて兄弟だという実感が生まれてくる訳ですね。これが今一番大事なんですね。

中 村
 時代によって違う、世代によって、まぁ世代ということは時代ってことでしょうけど。例えばNHKで昔やったおしんという番組の時は、大根の葉っぱを混ぜて、菜飯っていうんですか、これは貧しさのね、その時の象徴で、今は凄いでしょう。大根の葉っぱが大体あんまり取れないから。これは寧ろ料理屋さんなんかに行けば、しかもおいしいごはんでそれをやったら、贅沢な御馳走ですよね。随分世代の違いというのを私なんか感じるんですけど。

木 村
 若い人もですね、回転寿司はよく食べますよね。あれはですね、新しい時代の始まりだと私は思っています。和食のお店でも会席料理なんていうと時間をおいて出してきますね。ヨーロッパでも今世紀始めからそのような出し方をロシア式サービスだと言って、要するにロシアでは寒いから作ったら直ぐに出さないと冷めてしまうということで、作った時に出してくるということになっている訳です。同時にあれは時間を食べていた訳で、進歩と発展の時代に入ったものですから、明日は必ずいいに決まっている。次はもっといいに決まっているという確信があって、じゃ今度何が出てくるかなぁと、皆でお喋りしながら期待を持ってそれを待っていた訳ですね。その時間を食べる時代が今終わって、これからは空間を食べる時 代が今始まってるんですね。つまり、最初から全部見えていないと安心ができないんですね。バイキングスタイルなんかもあれは全部見えています。今までの食べ方とは違います。回転寿司は15分で1回転しますので、全貌が分かっていますね。安心のある食べ方が出来る。

渡 辺
 僕は、お米のこととかごはんのことについてね、何となく知っているようなつもりになっているけど、意外や意外、知らないことがかなり一般の消費者の方にはあるんじゃないかなぁと、そういう意味では、これは知らない方が悪いのか、知らせなかった方が悪いのか分かりませんけれども。でもやっぱり具体的なことを考えたら、生産者の方からごはんというものはこういうもんなんだとか、お米はこういうもんなんだって、例えばお米の歴史なんか聞いていると面白くて、飽きないぐらい面白いですよ。そういうようなことを、生産者の方からもっと情熱を持って発信していくことが大事なんだと思いますね。これはごはんじゃないんですけど、例えば今農業で昔みたいに物作っていればいいやじゃなくて、ぶどうを作っているとこでも観光農園とか、サツマイモでも観光何とかっていうのがいっぱいあるじゃないですか。僕はあれだって、観光というのはやめて学習にすべきだと思ってますよ。絶対都会の人知らないんだから。学習というと片苦しいから嫌だと思う人がいるかもわかんないけど、学ぶって非常に楽しいことですよ。知らないことを覚えるんですから。だから、利口になったとすぐ言いますよ、今の主婦の人は。だから利口に させるような例えば学習農園のようなものを増やして、つまり農業全体に対して、もうちょっときちんとした関心を持たせるような学習をする、それがなんとなく国民運動につながっていくんじゃないかという気がしますけど。やっぱりきちんとしたことを理解してもらうことがまず基本じゃないかと思いますね。

木 村
 たまごっちていうのがありますね。国内二千万個、海外二千万個、四千万個売れたんですね。あれは育てる楽しさというものを、つまり愛情というものを機械の中に入れた最初のものだと思います。機械ですらあれだけ子供たちが関心を持ったんですから、まして本物ですね。植物であれ、動物であれ、作り育てる喜びになったら、絶対文句無しに彼らの心を捉えるはずです。文部省も学校ファーム、学校農園を、これ最初はフランスが熱心にやったようですけども、これからやろうとしていて、実際自分で作ったお米を自分で食べてね、不味いわけないですよ。これ最高に旨いに決まっているので、お箸を給食の時に持って来てもらって、ごはんを食べていただく。教育委員会も土地のお米、土地の野菜を学校給食に使う。そして今申しましたように自分で作ったものをまず積極的に食べていただく。これをやれば荒れる学級などは絶対に無くなると思います。植物や動物はこっちの言うことを聞きませんから、向こうに愛情を注がないと育たない。それが一番の教育にこれから絶対になると思います。それをやれば、人々のまさに子供たちの心が健全になると同時に、日本の食って一体何だろうかと肌身に染みて感じるようになりますね。全身 を刺激し、全身で考える、農業体験を是非これからやってもらいたい。それがこれからの農業観光になると思う。

中 村
 私は国民運動というのは、ごはんを食べよう国民運動と書いていますけど、やっぱり今のお話みたいに農業・農村をもっと知ろうという国民運動に結びつくものだと思うんですよ。おっしゃるように、知識のない人がいっぱいいますから、そういう方々に本当はそういう知識、学ぶとは楽しいことだということを普及していくことが必要だと思います。もう一つはですね、この間木村会長の元で私達議論した基本問題調査会の中で、自給率の引き上げのための数値目標の話が出ました。基本法が成立すればそれに伴って基本計画が出て、それの中に自給率何パーセントを目指すかということが出るわけですが、簡単に言うと自給率を上げるためにはごはんをいっぱい食べて肉を少し減らせば上がるんですよね、かなり。だけど、強制的なことはできないから、一体どうしょうかと議論したんですが。一方で、食生活が日本人の場合ごはんという炭水化物があったから健全だったんだけど、大分脂肪の比率が高くなってきた。世代によってはもう危険水域を超えてしまった。そっちの方からガイドラインみたいなものを作ったらどうだと、今度基本法に入りました。つまり自給率を下げるは、健康は損なうはじゃ救いがないから。やっぱり強制的に食生活を左右はできないけど、健康の面どうです、こうなりますよっていうことをですね、ガイドラインでも何でもいいんですが、長い目でみれば自給率の向上になるんではないかという気がしています。私は、ごはんを食べるだけでなく、今申し上げました農業・農村を知るということの意義を、今の食生活の中で訴えていくということはですね、いろんなごはんを食べようという運動がありますけどね、今日的な意味じゃないかなという気がしてるんですけど。

木 村
 例えば中山間地域にですね、どうやって人に来てもらうのか。来りゃ楽しいに違いないんで。何でも楽しく食べれば栄養になりますからね。太らないで健康的な体と心が出来るんですが。でも、中山間地域なんか、農業体験でもどうやったら俺の所に人が来るのかと、こういう話になりますよね。13世紀のドイツにザクセンシュピーゲルというのがありまして。北ドイツの法律書なんですが、こういうことが書いてある。穀物を採る(盗む)と死罪なんですが、13世紀だから穀物の無い時代ですから。しかし旅人が馬で旅をしていて、馬が腹が減って動けなくなった時は、道に片足を掛けて刈り取られるだけの麦は刈り取ってよろしい。これを詰め込んじゃいけないのですが、馬に食わせる分ですね。要するに山でガス欠になった時に無料ガソリンスタンドがあるとこういう話です。これを、中山間地域でやって足掛けた分だけ果物採ってよろしいとなったら、人来ますよ。大都会の近郊でそういうことやったら皆丸坊主になっちゃいますが、中山間地域では魅力ありますよ。やっぱり引っ張りこまないといけませんので。そういう魅力を大いに考えたらいい。

中 村
 学ぶだけでなく、そういう実利もあると。

木 村
 フランスのブルゴーニュ地方といって、ワインの王様ができるところがあります。そこに高速道路が通っているんですが、高速道路の料金所、つまり車が必ず止まるところ。周りはブドウ畑しかありません。そこに今ですね、5ヘクタールの大きな産業考古学館が建っています。5ヘクタールもありますから、ぐるぐる回っていると腹減ります。腹減ると、どうせ車止めたんだからちょっと飲んで、食べてね。そうするとその土地のことが分かりますし、それから消費も伸びます。この高速道路つまり人が沢山出たり入ったりする所と、正に中山間地域がですね、こういう形で結び合うんですね。そういう施設はこれから、まぁ道の駅というのが建設省にありますが、もうちょっと車との関係を考えて、そのような施設を作っていけば、土地の振興に役に立つんじゃないかと思いますね。

渡 辺
 今、木村先生がおっしゃったように、地域おこしをやる時には、具体的なことを考えないといけない。一番具体的なのは、今先生がおっしゃたようにショーウインドウですよ。ショーウインドウのない店に入ってこないですよ、人は。お客が入って来るようなショーウインドウを作ったら、それだから道の駅もショーウインドウに成り得ますし、高速道路に道の駅はないので、サービスエリアみたいなものがありますけど。それから、今日はおむすびの話が散々出たけど、あれよく考えたら、おむすびって持ち運びが出来るじゃないですか。だから、おむすびの復権した方がいいですよ。おむすびはもっと高級なところにも出てくればいいと思いますよ。

中 村
 今日は、ごはんとかお米とか地域とかいろいろ面白いお話を伺って本当にありがとうございました。
これからご一緒にこの国民運動をひとつ充実してやっていきましょう。どうもありがとうございました。


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